翼よごらんあれが名村の灯だ

CCOから見える対岸の中山製鋼所の煙突は、毎晩時間になると噴煙を上げる。
なかなかに壮観な光景である。昔々、先輩がよく引用していた北原白秋の「鋼鉄風景」という詩を思い出す。

神は在る、鉄塔の碍子に在る。
神は在る、起重機の斜線に在る。

神は在る、鉄柱の頂点に在る。
神は在る、鉄橋の弧線に在る。

神は在る、晴天と友に在る。
神は在る、鋼鉄の光に在る。

神は在る、近代の風景と在る。
神は在る、鉄板の響と在る。

神は在る、怪奇な機関に在る。
神は在る、モオタアと廻転する。

神は在る、装甲車と駛る。
神は在る、砲弾と炸裂する。

神は在る、円形の利刃に在る。
神は在る、一瞬に電光を放つ。

神は在る、鉄筋の劇場にある。
神は在る、鉄鋼のメーデーに在る。

神は在る、車輪のわだちに在る。
轣音は野菜を啖ふ。

神は在る、はてしなき軌道に在る。
神は在る、雷雲に反響する。

神は在る、立体のキュビズムに在る。
表現派は都市を湾曲する。

神は在る、颯爽と牽引する。
神は在る、鮮麗に時期を生む。

神は在る、天体は鉄鉱である。
神は在る、炎炎と熾っている。

北原白秋「鋼鉄風景」