職人の技

突然商店街の付近に金物屋があり、全品半額という金物屋にしてはあり得ないセールをしていると聞きつけ、行ってみる。
古いものばかりなものの品揃えはよく、見て回っていると店番のおじぃちゃんが話しかけてきた。
舞台用ナグリの柄で、曲がり柄というのをずっと探しているので、聞いてみると、「それはグミの木やな。グミの柄は大工がよく使うんや。叩いた時にしなって釘が打ちやすい。昔は多かったんやけどなぁ、今はほれ、大工もみんな機械のエアー打ちで釘打つやろ。あと山に入ってグミの木を刈って来るやつもおらんくなってな…。グミの木は刈って来た後もだいたい3年は乾燥させてやらないかんねん。短くても2年やな。そんなんで、もう扱ってるとこはよっぽど古い店以外ないんと違うかな…」と博識ぶりを発揮するおじぃ。
古きよき店の時間と知識の堆積に感心していると「これはグミやな・・・まっすぐに削ってしまってるけどな」と手彫りの柄を出してきてくれる。
手にとってみると、確かに握りやすくて手になじむ。
「舞台の仕事か?忙しいやろうけどええもんつかわなな」
というおじぃの言葉を背に店を出る。
もうちょっと探してみて、それでも見つからなかったら、おじぃの見せてくれた柄を買おうかと思った。