お芝居を見に行こう

ParkStyle「素浪人ワルツ」を見るために、赤い観覧車のHEPHALLへ向かう。
そういえば何度か来ているのに、観覧車に乗った事はまだない。

まず会場の中に入って軽く驚く。常設舞台をまったく使わずに、3面から囲む
形式での見下ろし型の舞台が組まれている。
「もともとこういう劇場なのかと思った」とは同行していた初HEPの猪股の発言。

役者と演奏者の軽妙な語りからの入りはライブを聞きに来ている感覚。「今日は
こんな感じでお楽しみ下さいね」と語り手の安元さん。
作品が始まって、いいむろなおき氏のマイムと映像とを組み合わせた表現の多彩
さに舌を巻く。しかも変に「技巧の粋を凝らした」というような硬いものではな
く、POPでとっつき易い。
理屈でなく、面白い。
また演奏者であるザッハトルテの面々も演奏以外にあらゆるシーンに出演してくる。
それぞれが一芸のあるパフォーマー・スタッフをまとめあげてひとつの流れ・イ
メージに構成するウォーリー木下氏の演出力ここにありというところか。

終演後、プロデューサー星川氏とお話した折に「今回、どういう作品なの?って
聞かれて一言で説明できなかったんですよね」というような事を仰られていた。
僕もそれは同感で、しかし「これはこういうものです!」と一言で言えないのが
この作品のいいところなのだろうとも思った。
「これは演劇です」「これはダンスです」「これは音楽です」と今まである言い
方で言い表せないものを創り上げる事が、今後のクリエイターには必要になって
くるのだろう。
「これはここでしか見れない」という事が表現者としての自身のブランディング
であるのだから。

そういう意味では今回のこのParkStyle 素浪人ワルツは作品として面白かったの
は確実であるが、それ以上になんともHEPHALLらしさの漂う催しになっていた。
これこそ主催事業として劇場が行う価値なのだろう、と幾分の羨望とほっこりし
た気持ちを持って会場を後にしたのだった。