表現者として

大勢観客を動員している作品に対して、たまに「へっ、エンタメやろ」という人がいる。で、そういう人に限ってゲージュツとやらに固執して、「動員とかちゃうねん」と言ったりして、結局誰もその作品を見ていなかったりする。どういう了見か。
そもそもパフォーミングアーツを行っている時点で「エンターテイメントでない」などということはあり得ない。


パフォーミングアーツというのは、絵画や彫刻や、その他の全ての芸術と違い、観客がその瞬間に立ち会う必要のある唯一の分野だ。つまり「如何にして観客をその場に立ち会わせるか」というところまでを含めて作品形成なのである。そこを忘れているひとが多いように思える。
「俺はいいもの作ってんだ」と無人の野で叫んだところで、それはただの自己満足に過ぎない。
なのに、なぜかお客を集めるということ自体がなにやら商売に手を染める(=芸術家らしからぬ)というように取られている嫌いすらある。
では誰かが御膳立てしてくれるのを待つというのだろうか?
自分で自分の環境を整えることができないパフォーマーは淘汰される。これは至極当然の原理だ。
絵画や彫刻やその他すべての芸術ならば、作品は残り、後世に評価されることもあるだろう。


しかし繰り返すようだが、パフォーミングアーツにおいては作品=その瞬間であるのだから、「パフォーマーはとにかくいい作品を作りさえすればいい」訳は無い。「いい作品を作る」などということは、およそ作品作りをする上で大前提のことなのだから、その上で自身の作品の前に観客を連れてくるところまで力を尽くして初めて、作品作りなのだということを理解しないといけない。


もちろん、それは自分自身で宣伝しまくるということを指しているのではない。(そういう時期も必要ではあるだろうが)周りの協力やビジネスモデルの提示などを含めて、自分がどの手法を選択するのかということだ。
「エンタメ!」と言われている手法を取っているパフォーマーを馬鹿にするものは、自分がその代替案としてどんな手法を持って観客を呼び集めているのか、己を振り返ってみるのをおすすめする。


エンタメ=非芸術などという自称ゲージュツ家を、僕は信用しない。