”Nostalgia Film” 「夏と夜空とマホウノビン」 #6

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「ヨ、ヨウコさん?」
ぽかんとした表情で言葉を返すアズサへにやっと笑いかけると、私はそのまま彼女の手を取って、ぐっと引き寄せた。
そして力の抜けた左手から魔法瓶を奪い取る。
「さ、いくよ」


鬼が出るか蛇が出るか、それは試してみてのおなぐさみだ。
こんな小さな口へどうやって、というのはただの取り越し苦労に終わる。
私の体はぐんぐんと、魔法瓶の中の光に向かって吸い寄せられた。もちろん、アズサも一緒に。


「・・・ヨウコさん、ヨウコさんってば」
大声を出して体を揺さぶられ、私はなんだかぼんやりした頭を振って立ち上がった。
ええっと、なにをしていたんだっけ・・・?
「ヨウコさん・・・」
不安げに私を見上げる二つの眼を見た瞬間、私の頭は回復した。
それじゃあここは・・・。


優しい風がそよそよと体にまとわりつく。辺りは物音ひとつなく、静かだった。
「ここが・・・わたしの」
アズサが私の横でぽつりと呟く。
さぁ、ほんとにここにケンザブロウはいるのだろうか。<続く>