”Nostalgia Film” 「ポケットにレーズンがいっぱい」 #3

#3
ベンチに腰掛け、少し離れた小学校の校庭から聞こえる歓声を聞きながら(きっと少年サッカーかなにかだ)、わたしはどこへ行ったものか考え続けていた。
わたしはいつまで毎週毎週、日曜日になるとこんなことを考えなくてはならないのだろうか。
日曜日なんて、ほんと、なくなればいいのに。


いくら考えてみてもいいアイデアは浮かびそうになかったので、わたしは仕方なく、公園からさらに林の奥へ入っていく道を辿ることにした。
この先へはまだ行ったことがなかった。
行かないようにしましょう、と学校やなんやで定められているわけではなかったが、なんというか、子供には近寄りがたい雰囲気というのがその場所にはあった。
子供はそういう気配を直感めいたもので感じることができる。


林道を経て、森へと至る小道を進んだ。
遠くにはまだ小学校の歓声が小さく聞こえていたが、それも次第に遠のき、辺りはしんと静まり返っていった。
途中、誰ともすれ違わなかったので、わたしは内心ドキドキし始めた。
「やっぱり、来ちゃいけないところだったのかな・・・」
歩き続けるにつれ、辺りは完全に木々に包まれ、登ってるのか降ってるのか、よくわからなくなってきた。


しばらく歩き続け、もういい加減少し休みたいなと思い始めた頃、ぽっかりと開けた空間に出くわした。
そこにはまるで置き忘れられたように、木のベンチがひとつ据えられていた。
辺りは静まり返っており、静謐というのはこういうことかと実感する雰囲気だった。


わたしはそのベンチに座って一休みすることにした。
ふと、いま何時なんだろうと思ったのだけど、辺りに時計はなかったし、わたしはもともと時計を持ち合わせていなかったので、諦めることにした。
時間のことは、考えないようにしよう。


歩いているうちは別に意識していなかったのだけど、座ってしまうと心地好い疲労が全身にまとわりついていた。
頭がぼんやりして、意識が途切れがちになってくる。
いつのまにか、わたしはウトウトと微睡み始めていた。
どこかへいかなきゃ、どこかへいかなきゃ。
頭はそれだけを考えていた。


〈つづく〉